2022/09/17
先日、人生で初めて「世界のウエディング業界」を感じた3日間を過ごしてきました。
マカオで開催された DWP Congress 2026。
日本のウエディング業界では、ほぼ誰も知らない。「DWPって何?」と聞いて、答えられる人は業界内でもごくわずかだと思います。でも世界では違う。70ヵ国以上から350名超のウエディングプロフェッショナルが集まる、グローバルでは「ウエディング業界のオリンピック」と称される最高峰のカンファレンスです。
今回はその体験を、包み隠さず書いていきます。
こんにちは、ウエディング系webマーケターこと、笠正太郎のライブログ~カサログ~です。僕は関西本社で、ウエディング業界20番手くらいのバリューマネジメント株式会社という会社で結婚式の集客の仕事をしています。
このブログでは、普段はウエディング、マーケティング、地域創生や観光、旅など笠の専門領域について、大阪、歴史、サッカーなど笠の趣味の領域について書いてます!
DWP Congressとは?——日本では無名、世界では別格
まず「DWP Congressって何?」というところから説明します。
Destination Wedding Planners Congress(DWP Congress)は、ドバイに本拠を置く QnA International が主催する、デスティネーションウエディング専門の世界最大B2Bプラットフォームです。
2014年にアテネで第1回が開催されて以来、毎年世界各地で開催を重ね、2026年のマカオ大会は 第12回目。この12年間で4大陸16都市を舞台に、フラッグシップ「DWP Congress」と小規模版「DWP Privé(Px Show)」合わせて数多くのイベントを展開してきました。過去の開催地にはヨルダン・アカバ、ギリシャ・アテネなど各地の個性ある都市が並んでいます。
参加者は単なる「聴衆」ではありません。世界屈指のウエディングプランナー、デザイナー、ラグジュアリーホテル、観光局、クリエイティブパートナーが一堂に会し、リアルなビジネス商談・知識交換・ネットワーキングが生まれる場。参加した複数のプランナーが「DWP経由で具体的なビジネスが生まれた」と証言するほど、商業的なインパクトも大きいのが特徴です。
日本ではほとんど話題に上らないこのイベント——それ自体が、日本のウエディング業界の「内向き」の証左かもしれない、と今回強く感じました。
なぜ2026年の開催地はマカオだったのか
DWP Congressは毎年、開催地を「物語のある都市」から厳選します。単なる観光地ではなく、文化的アイデンティティ・没入体験・インスピレーションを提供できる都市であることが条件です。
2026年の選定理由として挙げられたのが、マカオの持つ 東西融合の歴史的アイデンティティ。ポルトガルの植民地時代の名残が色濃く残る世界遺産の街並みと、中国文化の厚み、そして世界屈指のリゾートインフラが共存するマカオは、まさに「新しい時代のデスティネーションウエディングのカンバス」として選ばれました。
今大会のテーマは 「New Silk Road to Weddings」——シルクロードが東西をつないだように、ウエディング業界の東西を結ぶ架け橋となる、というコンセプトです。マカオの「橋(ブリッジ)」のイメージも重ねられており、新たな地平と協業をつなぐというメッセージが込められていました。
マカオのバックグラウンドを具体的に言うと:
- ユネスコ世界遺産の歴史地区を擁する
- ユネスコ創造都市(ガストロノミー部門)に認定
- ポルトガルの建築文化と中国伝統が混在する唯一無二の景観
- The Venetian・The Parisian・The Londoner Grandなど世界水準の統合型リゾートが集積
- ミシュラン星付きレストランを含む食の多様性
- グレーターベイエリア(大湾区)のMICE・セレブレーション拠点として急成長中
マカオ観光局(MGTO)が「サポーティングパートナー」として全面的にバックアップし、参加者向けにFAMトリップ(研修旅行)も提供。30名の国際メディア・KOLがマカオの魅力を世界へ発信する役割も担いました。
マカオ到着——さすがカジノ国家、スケールが違う
そんなマカオに降り立った瞬間から、その非日常感に圧倒されました。
街全体がリゾートといっても過言ではない。大阪IRの議論が続く日本と比べ、マカオはすでに統合型リゾートが街の「当たり前」になっている。日本の10年先を走る景色がそこにありました。
宿泊先は ロンドナーグランドホテル——今大会のホストホテルパートナーを務めた5つ星ホテルです。驚いたのは、1泊2万円台というコスパの高さ。そして、もっと驚いたのはチェックイン後の部屋の中。
DWP Congressの「おもてなし」は、到着の瞬間から始まっていました。参加者一人ひとりへの細やかな演出が、すでに「ここは普通のカンファレンスじゃない」と教えてくれます。
Day 1——ウェルカムパーティ「ラビアンローズ」の夜
初日はウェルカムパーティからスタート。ドレスコードは 「ラビアンローズ(薔薇色の人生)」。ピンクに染まった会場に、世界中のウエディングプロが集結しました。
今大会のウェルカムセレモニーは、ロンドナーグランドホテルのオープニングを皮切りに、夜はパリジャン・マカオのシンボル「エッフェル塔」を借景にしたカクテルレセプションへ。マカオのダイナミックな夜景をバックに、業界の最高峰が顔を合わせる——このロケーションの演出だけでも、普通のカンファレンスとは格が違いました。
そしてある瞬間、ふと気づいたこと。
各国の参加者が自国の文化や特色を背負って集う場。気づけば自分も「日本代表」としてこの場に立っていました。米国・英国・インド・中東・アフリカ・東南アジア……世界の婚礼市場を動かしている人たちと、同じ空気を吸っている。その実感が、ゆっくりと体に染みてきました。
パーティでは世界的に有名なウエディングプランナーと直接話す機会も。
今大会には、世界最高峰のデザイナー Preston Bailey(米国)をはじめ、The Wedding AtelierのLelian Chew、Ryohan + Anne JangのAnne Jang、Luxury Events By Kevin LeeのKevin Leeなど、各国を代表するウエディングプランナーが多数参加。これだけの顔ぶれと同じ場に立てること自体、ありえない経験です。
Day 2——商談会、そして「日本のガラパゴス化」への気づき
2日目はカンファレンスのメインデー。朝からウェルカムキーノートに始まり、世界のウエディングリーダーたちのセッションが続きます。
DWP Congressの「学び」のコンテンツとして特徴的だったのが Innovation Pods(イノベーションポッド)と呼ばれるインタラクティブな少人数セッション。参加者からは「時間が足りなかった!」という声が上がるほど人気を集めたプログラムです。
この日のカンファレンスでは、業界を変えるトレンドが次々と提示されました:
- マルチデイ・セレブレーションの主流化(複数日にわたるウエディング体験の標準化)
- AIを活用したプランニングツールの台頭
- カルチャーストーリーテリング × パーソナライズド体験の重視
- サステナビリティと責任ある観光の組み込み
- リアルタイムコンテンツ制作・SNS発信の必須化
「ラグジュアリーとは、大きさではなく、どれだけ深く感じられるかだ」——そんな言葉が会場に響いていました。
1対1のビジネス商談会——世界デビュー
午後はいよいよ 1対1のビジネス商談会へ。
DWP Congress最大の特徴のひとつが、この構造化されたビジネスマッチング形式。プランナーとホテル・目的地の担当者が、事前にセットされた一対一の商談を次々とこなしていく仕組みです。参加者の中には「予定10回の商談が25回に増えた」「35回の商談を行い非常に有益だった」という声も複数あったほど、ビジネスとしての熱量が高い場でした。
商談の中で、笠が感じた大きな気づきがありました。
これは、ウエディング業界に関わる全員が受け取るべき警鐘だと思います。
さらに商談では、1億円超のメガウエディング案件の話にも触れる場面が。
インバウンド婚のポテンシャルは間違いなくある。でも、受け皿の整備が追いついていない——そのリアルな課題感が言葉に滲みます。
業界アワード——世界のトッププランナーが表彰される
Day 2のハイライトのひとつが、毎年恒例の DWP業界リーダーアワードと、今年新たに設けられた コンテンツクリエイター パワーリストの発表でした。
アワード受賞者には、UAE・インド・フランス・フィリピン・韓国・南アフリカ・イタリアなど各国を代表する24名のウエディングプランナーが名を連ねました(Ali Bakhtiar Designs、The Wedding Atelier、Luxury Events By Kevin Lee、Tamarind Globalほか)。
これだけ多様な国籍のプロたちが、同じ舞台で認められる——その光景が「グローバル」というものの本質を見せてくれました。
世界のステージへ
商談会の休憩中、ふとカンファレンスのステージに上がる機会がありました。
この一言に、3日間のすべてが詰まっている気がします。
Day 2夜——ガラディナー、そして国際麻雀バトル
2日目の夜は ガラディナー。チームジャパンで衣装を合わせていざ会場へ。
そしてアペリティフパーティで予想外の展開が。
国も言葉も違うのに、麻雀の卓を囲めば自然と笑いが生まれる。DWP Congressのもう一つの顔——カルチャーを越えた「人と人のつながり」が、こういう瞬間にこそ現れます。
ガラディナー本編は——
エンターテインメントの規模感も、さすがマカオ。日本では体験できないスケールのショーで、夜は更けていきました。気がつけば、深夜2時。
Day 3——5分前集合は日本人の国民性
翌朝、前夜のガラディナーが深夜2時まで続いたにもかかわらず——
思わず笑ってしまいつつも、これが日本人の強みでもあり、世界との「違い」でもある。
3日目のカンファレンスでは、ある出会いが特に心に刺さりました。
戦争の中でも結婚式を続けるウエディングプロたちがいる。コロナ禍→戦争という二重の苦難の中、それでも笑顔で世界の舞台に立つ人がいる。自分の「壁」がいかに小さいか。この気づきだけで、参加した価値は十分すぎるほどでした。
クロージングパーティと、次回開催地発表
3日間の締めくくりは、クロージングパーティ。
終わりに向かうほどテンションが上がっていく——これもDWPらしさかもしれません。
次回開催地:2026年10月6〜8日 インド・ウダイプール「フェアモント・ウダイプールパレス」
発表の際には、会場全体から歓声が上がりました。ウダイプール——インドのラジャスタン州にある「湖の都」と呼ばれる城塞都市。デスティネーションウエディングの世界では垂涎の地です。すでに次が楽しみです。
参加者たちの言葉——世界はこのカンファレンスをどう見ているか
参加者の声をいくつか紹介します。
Preston Bailey(世界的ウエディングデザイナー、米国) 「5回目のDWP参加です。マカオの会場とサービスは本当に素晴らしかった。」
Lelian Chew(The Wedding Atelier) 「DWP Congressは東西のデスティネーションウエディングの世界を巧みにつなぎ、真のグローバルパートナーシップを育む場。」
Anne Jang(Ryohan + Anne Jang) 「細部へのこだわりが素晴らしいプラットフォーム。世界中の才能あるプロと繋がり、学び、グローバルな成長の機会を実感できた。」
Tapiwa Mukoti(RSVP Collective) 「DWPは毎年スタンダードを更新し続ける。マカオは驚きだった——一つの目的地で複数の目的地を体験するようだ。」
Fabian(The Dolder Grand、スイス) 「商談の予定は10回だったのに、結果的に25回行うことになった。私の目的地に多くの人が興味を持ってくれた。」
世界のトップが口を揃えて「ビジネスが生まれた」「思った以上だった」と語るカンファレンス。それが、日本ではほぼ知られていない。
3日間を終えて——日本のウエディング業界へのメッセージ
今回DWP Congressに参加して、強く感じたことがあります。
日本のウエディングは、ガラパゴス化している。
日本人が日本人のために作り上げてきた結婚式の文化は、間違いなく世界に誇れるクオリティを持っています。でも、その扉は内側にしか開いていない。
インバウンド婚の需要は確実に増えています。しかし、富裕層の外国人カップルが求めるウエディングを受け入れる「整備」が、日本にはまだ足りていない。1億円超のメガウエディング案件が世界で普通に動いている中、日本はその土俵に上がれていない。
行政、業界、プランナー、ベニュー——それぞれが連携しながら、今から準備を始めないと、10年後には外国資本が日本で外国人向けの結婚式を展開する時代になってしまう。
世界のステージに立って初めて見えた、日本の現在地。これをカサログを読んでくださる方に届けたくて、今回この記事を書きました。
来年もDWP Congressに参加したい。参加費だけで1名65万円。
さらに渡航費と衣装代がかかるだけに、まずは頑張って受注しないとです(笑)。
世界は広い。これからもがんばろ。
バリューマネジメント株式会社 笠正太郎
ブログ「カサログ」:kasalifelog.com
X:@qtaro_s53 Instagram:@shotarokasa
関連情報
- DWP Congress 公式サイト:destinationweddingcongress.com
- 今回の会場:Sands Resorts Macao(The Londoner Grand / The Parisian / The Venetian)
- 主催:QnA International(Managing Director:Sidh N.C.)
- 後援:マカオ観光局(Macao Government Tourism Office / MGTO)
- 次回開催:2026年10月6〜8日 インド・ウダイプール「フェアモント・ウダイプールパレス」